百個の書体の違う《福》という文字をハンコにしてみた。 元の文字は掛け軸の毛筆文字。一文字の大きさは4cm。 かなり大きいため、完成までに1年を計画。 しかし百個押印するためには2人で3時間を要する。 押印作業が予想外で「大作」になった。
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ハンコの元になる百福は、それぞれ書体が違う百個の福を書いて掛け軸にした書。
兄の手によるもので遺品。
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3つの「これはエライこっちゃ!」 約1年後、
百個目の最後の一文字を彫り終えた時「やったぜイ!」としばらくの間自己満足にひたっていると
まず「エライこっちゃ!」の一つ目は、印影の赤色はどぎつすぎること。
そして「これはエライこっちゃ!」の二つ目は、押しにくいこと。 早い話がハンコを両手で押えて腕立て伏せの格好のまま、
全体重と渾身の力を込めての10秒間。
「これはエライこっちゃ!」のとどめの3つ目は、
ところが、主婦を中心とした情報網は「ス・ゴ・イ!」。
その後一級印章彫刻士である街のハンコ屋さんと話す機会があったので、この画像をお見せした。 彼はしばらく眺めていて「この百福は20万円以上の価値がある」とボソッとのたまわれた。 価格がどうであれ販売しようという気にはなれなかった。 これを押す時の苦悩が超高速で頭をよぎって、 「販売」という文字をどこかに連れ去ってしまったのだ。
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左側:書の百福 右側:ハンコの百福
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書の百福 拡大 ハンコにした百福 拡大
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